[時事]名探偵が多すぎる

少し古くなりますが、足利事件の逮捕を決定づけたDNA鑑定結果が、最新の鑑定で否定されました。
http://mainichi.jp/area/tochigi/news/20090509ddlk09040112000c.html



DNA鑑定と言えば、最新の科学捜査になくてはならないもので、その精度は「同じDNA型を持つ人間は4兆7000億人に1人」と言われるほど高い物です。
ただし、言い換えれば4兆7000億人に1人は同じ型を持つ人がいるわけです。
これは誤差とは言えない確率ですが、ゼロでないことだけは確かです。
さらに、足利事件当時の精度は「1000人に1.2人」。
もう少し精度が低くなります。



シャーロック・ホームズを境に、刑事捜査は状況、動機、自白捜査から科学捜査主体に変わってきました。
もちろん「疑わしきは罰せず」の原則から、数字で犯罪を立証できる科学捜査の重要性は理解できます。
ところが、科学とは日進月歩です。
昨日の正解がきょうの誤解ということだってありえるのです。



いずれすべての人間が捜査機関にDNAサンプルを提出し、逮捕率を飛躍的に向上させる未来だってありえるかもしれません。
どっかの世界では、出生時に犯罪者因子を特定し、迫害するという奇想天外な物語もありましたが、笑うことはできません。



ただ、足利事件のような結果は、今後、どんなに科学が発達してもありえると思います。
それをどう防ぐかは、結局のところ科学以外の足で稼いだ補足が不可欠であることは、変わることがないでしょう。



いずれにせよ科学と大量の捜査員による物的証拠の集積が裁判員を納得させる逮捕理由でなければならいことは明白です。
結局、捜査の世界にはエルキュール・ポワロも金田一耕助も必要ないんだと、「名探偵の掟」を読みながら残念に思うわけです。