[小説]スクールアタック・シンドローム  舞城王太郎著

山田悠介の「リアル鬼ごっこ」をこき下ろした書き込みに、きょうまたコメントを頂きました。
2年前の書き込みなのに、おそるべし山田悠介


しかし「自分は小説書けるんですか?」と言われましても、当然書けません、すいません(笑)
なのにただ、けなすだけなんて本当に「失礼な人です」よね。
何十万部も売るような人気作家と、こんな駄文のブログ書きを比肩していただき恐縮です。
人にはいろんな見方や考え方があるんだということをぼくに教えてくれた、非常に貴重なコメントでした、ありがとうございました。




さて、ぼくが個人的にどうしても読んでほしくない本の話はおいといて、どうあっても読んでほしい本を紹介しましょう。


3作品の短編集。


母校をたった3人で襲撃し、623人を殺した高校生が出現。
暴力症候群に冒された世界の中で、引きこもりぎみの父親と15歳しか年の離れていない高校生の実子の対峙を描いた表題作。


28歳で突如脳外科医になろうと決意し、高い評価を受けていた会社を辞めた男。
ある日娘が、丸々と太った家ネコを「トトロだ」と言いだし始める。
「我が家のトトロ」


異常嗜好の叔父から偏愛される杣里亜(そまりあ)は、何度殺されてもただのクラスメイトである俺・徳永の前に蘇生する。
ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート」




見たこともない虚構を現実として舞台装置に使い、閉ざされた空間の中で人を語る。
いわゆる「春樹チルドレン」だとよく分かる作品集です。
虚構は伝えたいメッセージの逆引きで用意されているため、舞城作品ではそれが「暴力の猛り」であることが多いようですが、1本目の「スクール−」はまさにそれを象徴する作品だと思います。


80年代以降の少年犯罪の異常化を知るぼくらにとって、暴力とは流行を超えた症候群であるという解釈には共感できます。
その中で「個」として生きることの道筋というか、もっと有り体に言えば「言い訳」を書き連ねる作品。
死んでないから生きてるわけですが、「なぜ」の部分にもっともらしい言い訳、いわゆる意味づけがなければ、こんなに寂しい人生はありませんものね。



金額で評価するなら(標準 ¥500)



¥1500


です。


舞城作品は、読了後、読んだ気にさせてくれるものが多いです。