[映画]犬神家の一族

リメイクって言うのは否応なく前作と比較されるものです。
椿三十郎」をリメイクした森田芳光監督は
「ぼくは比較されるの好きですから、どんどんしてください。
 クロサワ作品をリメイクできて光栄、という気持ちのほうが大きい」
と言っていました。
市川崑監督は自作を30年前そのままにリメイクすることについて、何を考えたのでしょうか。


あらすじを簡単に
信州の大富豪・犬神家の当主佐兵衛が死んだ。
残された莫大な財産は遺言により、佐兵衛の恩人の血縁である野々宮珠代がすべて相続することに。
ただし条件がある。
佐兵衛の3人の実娘・松子、竹子、梅子がそれぞれ一人ずつ持つ息子・佐清、佐武、佐智のいずれかと結婚すること。
3人の娘をはじめ、怒り狂う親族だったが、突然、佐武が誰かに殺されているのが見つかる。
犯人は誰なのか、東京から呼ばれた私立探偵・金田一耕介が事件解決に乗り出す。


30年前の原作は当時、洋画に押され衰退しそうだった邦画を救った、エポックメイキングな作品だったと言います。
庵野秀明が敬意を表して、タイトルロールでのキャスト紹介のやり方をそのまま、エヴァンゲリオンのチャプタータイトル画面でパクッたというのも有名な話です。


実はぼくは前作を見ていないのです。
ただ小学生のころ、テレビで「獄門島」を見て衝撃を受けたのをはっきりと覚えています。
それ以来、ぼくの金田一耕介は、古谷一行でも片岡鶴太郎でも、ましてや稲垣吾郎でもなく、石坂浩二その人です。


まず最初に、フィルムの質感が気になりました。
多分あえて質を落とし、昭和調の画質を作っているのです。
ひょっとして30年前も同じような試みをしているのであれば、
「リメイクする意味ないじゃん」
とすぐに考えてしまいました。
なんだか前作をもう一度流しているのかな、という感覚にとらわれました。


この作品は市川監督曰く「メロドラマ」だそうですので、謎解きを楽しむことはできません。
だいたい、犯人が分かるのは、これ以上死ぬ人がいないんだろうな、となんとなく分かってからですから。
果たしてメロドラマとしてはどうだったんでしょうか?
個人的に、胸を捕まれるようなセリフもシーンもありませんでした。
湖などの風景が美しかっただけに残念です。


キャストはほぼ全員適任。
松嶋菜々子の珠代は無難でしたし、富司純子の松子にはツヤがありました。
富司と尾上菊之助の実際の家族を親子役で起用したことも、現実以上にリアルな感じがして、引き込まれました。


唯一気になったのが、誰あろう石坂浩二でした。


ぼくの知ってる金田一は、もっと細かったぞ!!!


リメイクの弊害でしょうか、どうしても比較してしまいます。
そうですよね、35歳と65歳では、比較するのが間違っていますよね。


それでも、同一キャストであるからこそものすごく気になる。
等々力署長は全然気にならなかったのに…


金額で評価しますと(標準を1500円として)


¥1000


ですか。


決して不出来な作品ではなく、むしろ上出来の部類に入ると思います。
でも、前作の話題性はありませんし、期待していくと…ということです。