[小説]小説「ラッシュライフ」 伊坂幸太郎著

風邪が長引いています。
10日もかかって一向に良くなる気配がありません。
というか、風邪なんだかなんなんだか…
ただ職場では労られるのに、家に帰ると小間使い。
なぜならぼくが一番症状が軽いから…


群像劇というと最も気になるのが結末です。
複雑にからみあう1つ1つのストーリーがどんなふうにフィナーレを迎えるのか、そこが読ませどころであり、作家の力量が問われるところです。
そういう意味では昔見た映画「マグノリア」は、一言でいうと
アメリカ的強引」
でした。
意味がわからんかった。


伊坂幸太郎さんの作品を初めて読みましたが、当然ちまたで噂の映画「陽気なギャングが地球を回す」に触発されてのことです。
ラッシュライフはそうでもないですが、とにかく「オーデュボンの祈り」「重力ピエロ」など、ふるったタイトルも付けられる作家さんで、ジャケ買い好きのぼくの興味をそそります。


あらすじを簡単に
仙台に住む、大別して5組の人々の日常は、エッシャーのだまし絵のように一つにつながっていた。
1 大金持ちの画商と女性画家
2 プロの空き巣
3 新興宗教幹部と信者
4 女性精神科医とサッカー選手
5 失業者と犬
(順番は池上冬樹さんのあとがきによります)


扱っているテーマは非日常的日常で、時間軸をずらしてだまし絵を作っているため、非常に凝った構成になっています。
多分設計図をちゃんと書きながらでないと、ぼくにはすべてのつなぎ目が理解できないでしょう。


であるがゆえに、推理小説を探偵より先に犯人探しをしたいがために読んでいる人ならば多分楽しめるでしょうが、犯人探しの場面で理論が解き明かされるのを待つぼくのような読者には、少々難解です。
例えば同じ時間軸ずらしにしても、木更津キャッツアイのようにつなぎ目が一つだけならついていけたのかもしれませんが…


そして大切なことですが、もちろん5組すべてに感情移入することはできません。
感情移入できなかった組の物語については「つまらなかった」というのが感想です。


一つ一つをバラで小説にしたら、という仮定は余り意味がないのですが、それぞれの完成度がそれほど高くないような気がしました。
つなぎめでいかに「すごい」と思わせるかが勝負の作品ですが、つなぎのできもまちまち。
郵便局に強盗にはいると局員がスタコラと逃げ出した、というところのつなぎは大好きでしたけれど。
あるいは将来の作品のための習作なのかな、という気がしました。


金額評価ですが(文庫本ですので標準¥500として)


¥450


です。


少なくともぼくがこれまで見たり読んだりした群像劇というジャンルではトップクラスの作品です。