[映画]愛の流刑地

高校生のころ、本を読む人間は賢い人間だと思っていた、というか、賢いと見られたいと思っていたぼくは、30分間の電車通学中に渡辺淳一の「うたかた」を読んでいました。
失楽園の前のベストセラーです。
上下巻で3000円くらいでしょうか、もちろん当時の一カ月分の小遣いをはたいて「清水」ですよ。
おもろいおもんない、以前に、「意味が分からん」。
一つだけはっきり確信したことは、「この本は、高校生が読んじゃいかん」。


あらすじを簡単に−
ヒット作から遠ざかる作家と、製薬会社に勤める夫との間に3人の子どもを持つごくふつうの主婦。
2人が出会い、愛し合い、そして作家は情事のさなか主婦に懇願され、首を絞めて殺してしまう。
2人の間に何があったのか、裁判の中で作家は、主婦とつながっていた時間を振り返る。


ま、予想はしていたんですがね。
愛とセックスを真正面から見据える、渡辺淳一の最近の作風は、個人的に
「性に合わない」
まったく。
おもろいおもんない、以前に、「意味が分からん」。
原作に忠実にストーリーを構成しているとすれば、こんなテーマで本を書く必要はどこにもないと思いました。
あれ、高校時代から成長してないな、ぼく。


懇願されたから愛人を殺す作家。
そうしたならどうなるのか、もう少し想像力を働かせましょう。
愛人に絶頂の中で殺してほしいと願う主婦。
自殺を容認するわけでは全くありませんが、死にたいなら自分で死ね!
3人もの子どもの母親なんだから、人を巻き込むな。


法廷という「リアル」の場で、「愛」という便利な言い訳を使って2人だけの勝手な言い分に浸る作家の心理を、ぼくが理解するのは本当に難しいのです。
「愛している」と言わないのが格好いいとはまったく思いませんが、自分だけの世界に終始する2人を容認する物語は、現在の風潮が書かせたのでしょうか。
行く末の困難を想像してか、はたまた愛が枯れるのを恐れてか、安易に死を選ぶのは「なし」でしょう。
自分のことしか考えてないんでしょうか?


致命的なのは、寺島しのぶがかわいくないことです。
はかないながらも強い芯を持つ女性という役柄のはずですが、どっからどう見ても「強そう」に見えます。
黒木瞳寺島しのぶ、どちらの裸が見たいか、というと、ぼくは圧倒的に黒木瞳を選びます。


唯一検事役の長谷川京子が雨の中、不倫相手の上司・佐々木蔵之介を訪ね、「奥さんが待っていらっしゃるんでしょう」という言葉で誘いをかけるシーンだけがドキドキしました。


金額評価をすれば(標準1500円)


¥800


でしょうか。


偶然かもしれませんが、ぼくが見た回は、周囲におじちゃんおばちゃんしかいませんでした。
そんな作品かもしれません。