[小説]「Kの日々」 大沢在昌著

この本を読み始めるまでは大沢さんの「アルバイト探偵」シリーズ再出発巻を読んでいたので、軽い感覚で読み始めてしまいました。
意外や意外、重厚かつさっぱり。
大沢小説の真骨頂を見た思いです。


あらすじを簡単に−
3年前、新宿に本拠を置く中堅経済やくざ・丸山組の組長が誘拐された。
実行犯は同組の構成員2人と中国人・李。
誘拐は成功したが8000万円の身代金は李とともに消えた。
そして李もまた東京湾に死体となって浮かんだ。
身を隠すため刑務所に入っていた2人の実行犯は、身代金の行方を追うため、裏の世界で探偵家業をする「木」を雇う。
「木」が目をつけたのは、犯行当時、李の恋人だった女「K」。
「木」の動きと呼応するように、3年間闇に葬られていたはずの事件の針は、少しずつ回転し始める。


大沢さんの本の中で、ここまで引き込まれたものは正直ありませんでした。
限られた登場人物を疑いながら読む「犯人捜し」、絡まった糸を丁寧に丁寧にときほぐすような「構成」。
「ああっ」という驚きこそないものの、良質のミステリーを読んだ思いです。


「魔女の笑窪」などなど、女性を書かせたら非常につらいと思っていましたが、今作の中心人物の一人「K」という女性は、「木」や李、丸山たちを反射する鏡の役目。
ハードボイルドな男を書くならお手の物の大沢さんですから、それはもう魅力的な男どもで、自然「K」も魅力的な女性に見えてくると言う寸法です。


ただし「K」には、もっと完璧な女性でいてほしかった気も。
よくも悪しくも「鏡」の存在でした。


金額評価は(単行本のため1000円を基準として)


¥1300


です。
最後の150ページは一気読みしてしまいました。
これは必読(ただし、買うなら文庫を待ってもいいかも)。