[小説]「楊家将」(上下) 北方謙三著

ハードボイルドという言葉の響きが嫌いなので、北方謙三をずっと避けていたのですが、最近人に勧められまして、ま、歴史物ならと軽く読み始めました。



あらすじを簡単に
10世紀末、北宋成立時に帰順した軍閥・楊家。
代州を根城にするその家は、楊業とその7人の息子をはじめとする将たちが3万足らずの兵を抱えており、文治国家の中で最強軍と目されていた。
五代十国をすべた宋・太宗にとって、中国を統一するために残る領土は、遼が支配する燕雲十六州のみ。
15〜50歳までの男子をいつでも軍隊として使える軍事国家・遼との決戦が近づいていた。




びっくり、すげー!!


こいつは面白い!!!



中国物は宮城谷昌光をガッツリ読んで、陳舜臣田中芳樹と塚本ナントカをちょっと読んで、


「宮城谷がいればあとはいいな」


と思っていたのですが、まったくの考え違いでした。
こんなに一気に本を読んだのは、「そして誰もいなくなった」以来です。
(前にも同じようなことを書いた記憶があるので先に誤っておきます、ごめんなさい)



はっきりと「武」を意識させる軍人は、政治家だろうが軍人だろうが、題材が変われどいつも主人公が「徳」を中心に行動する宮城谷作品と違い、ぼくにとってまったく目新しい存在でした。
さすがハードボイルド上がり。
ほかの歴史作品を読んでみないと分かりませんが、「力」を中心に歴史小説を手がけるなら、おそらく今一番かもしれません。
佐藤賢一の「双頭の鷲」デュ・ゲクランに匹敵してます。



敵役にも天才を登場させることで、ただの勧善懲悪、あるいはお涙頂戴物になっていないところは非常に好感が持てます。
というか、敵が魅力的じゃないと物語が盛り上がらないのを知っているんでしょうね。



すべてを書き分けるわけにはいかないと、父親と1、4、6、7番目の子供を中心にすえているのですが、やっぱり主人公は5人が限度なのでしょう。
おかげで5人それぞれに感情移入しまくり、ラストシーンは必涙です。




金額で評価すると  (標準 ¥600×2=¥1200)



¥3500



です。



といって、「水滸伝」や「三国志」を読む気にならないのはなぜだろう。
題材が使い古されているからかも知れません。


次は「続・楊家将」の文庫化を待ちます。
すでに立ち読みで100ページまで読んだのですが、ちょっと期待が薄れているので…
(その後、続編「血涙」読了。 http://d.hatena.ne.jp/you-sak/20080509